女医の離職率が高くマイナー科を選ぶ真の理由とは?
※当ブログにはプロモーションを含みますが、記事内容は公平さを心がけています。
東京医大が大学の入学試験で女子学生を差別してふるい分けしていることが問題になっています。
東京医大の入試担当者がそのようなことをしたのは、女性医師の離職率や女性医師が内科や外科などの、いわゆるキツイ「メジャー科」に入局せず、「マイナー科」と呼ばれる眼科や皮膚科に多く行っていることが背景にある、と言われています。
どのような理由があるにせよ、医学部という最高の難易度の学部に挑戦し、合格するために青春捧げて必死に勉強している女子高生や浪人生を、女性一律減点工作によって差別することは許されません。
さらに、女医が離職することやマイナー化に行くことを非難めいた論調で語られていますが、このことに付いても、強い違和感を覚えます。
今回は女医の離職と女医がマイナー科を好む理由について紹介します。
女医が大学病院での常勤医を辞めたりマイナー科を選ぶのは女医が悪いの?
女医が離職し、マイナー科に多く行くため、メジャー科で医師不足がおきていることについては、問題であると私も思います。
しかし、その問題の責任は、離職をする女性医師やマイナー科を選択する女性医師だけにあるわけではありません。
問題の本質的な部分を理解するためには、「何故」女医が離職し、マイナー科に多く行く傾向にあるのかを理解する必要があると思います。
女医が大学病院を辞めたりマイナー科を選択する理由とは
女医が大学病院を離れたりマイナー科を選ぶ理由の一つに、女性ならではのライフステージの変化があります。
女性医師も一人の人間であり、一人の女性です。
人並みに恋をするし、仕事ばかりしていれば人並みに疲れるし、人並みにプライベートも充実させたいという気持ちがある、普通の女性と同じ、一人の女性です。
医者は、人生全て、つまり、寝ても覚めても24時間患者のことを考えていて、医師は24時間いつでも医師!
医師だって同じ人間です。
人生の全てを仕事に捧げるのではなく、「結婚」「妊娠」「出産」をすることを希望する人も、多くいます。
しかし女性の場合、結婚、妊娠、出産というライフステージの変化がおきた時、男性と同じように仕事を継続する事が今の大学病院では難しいのです。
もっとも、これは日本の社会で働くほぼ全ての働く女性が同じように感じていることでしょう。
大学病院は、民間のブラック企業と同等以上に悪い労働環境ですので、そんな環境の中で「結婚」「妊娠」「出産」をすることがいかに難しいかは、女性なら容易に想像していただけることでしょう。
「結婚」「妊娠」「出産」を視野に入れた時、普通の女性なら産休が取りやすい職場、育休が取りやすい職場を好むのは自然なことです。
さらに言えば、産休・育休を取得することに対して肩身の狭い思いをせず、日中にランチを取るために昼休みを取るのと同じくらい自然に、産休や育休を取らせてくれれば最高です。
しかし、そのようなことは、残念なことですが今日の日本の大学病院において、内科や外科などのメジャー科では、まだ望めません。
これは、東京医大に限った話ではありません。
結果、女医の多くは、「結婚」「妊娠」「出産」を意識すると、多少は環境が良いマイナー科を選ぶか、大学病院をやめるという選択肢をせざる負えないのです。
出産・育休に理解がある大学病院は皆無に近い
もっとも、出産と産休に関しては、大学病院でも嫌な顔はされますが、かろうじて理解があるのか、認めてもらえます。
しかし、大学病院で妊活をしたいと言ったらどうなるでしょうか?
そもそも大学病院では、
「男女平等を訴えるなら、出産ギリギリまでは男と同じくらい働け!」
と、思われています。
安全をとって、(法律で認められている範囲で)少し早めに産休に入ることすら嫌がれる状況です。
中には、本人がギリギリまで働く意思があったとしても、そうできない事情も多々あります。
私が知る常勤マタニティ女医さんたちの中にも、御本人は出産ギリギリまでフルで働きたいという思いを持っていたのに、切迫早産の診断を受けたたため、自宅安静、入院安静が必至になり、やむを得ず予定より早く産休に入らざるを得なくなった方がいらっしゃいます。
切迫早産の診断を受けて泣く泣く入院せざる負えなくなったそんな彼女に対して、男性医師は次のような言葉を口にします。
「(ちっ)こっちの仕事が増えて大変になるなぁ!」
「妊娠していなくなる女医の穴埋めする身にもなってほしいよ。」
「(産休から開けて)復帰したら2倍働いてもらわないとな!復帰どころかそのままフェードアウトですかね?あはは」
「産休や育休に対して理解がある」ということは、なんとか「産休や育休が取得できる」ということではありません。
産休や育休が取得することが、ごく自然なこととして、周りに受け入れられ、理解され、肩身の狭い思いをしなくて良いことです。
「昼食にいってきますね~。」
と言う同僚に、快く自然に「いってらっしゃ~い」と笑顔で言うのと同じように、産休や育休を取る同僚に自然な笑顔で応じられるような環境が、「産休や育休に対して理解がある」といえる環境です。
(もっとも、大学病院では患者が多い時にはランチを取る時間も少ないのですが・・・)
「女医は妊娠を理由にすぐ辞めたり休む」
と、軽口を叩かれますが、女性にとって出産することがどんなに大変なことなのかを男性はご存知でしょうか。
子供を産むということは、医療が発達した今日になっても、死産のリスクこそ昔に比べれが減少したものの、女性にかかる負荷は相変わらず大きいのです
もちろん、そんなことは医学を学んでいる医者は百も承知ですし、なにも男性医師が非道外道なわけではありません。
それでも妊婦の同僚に対して、ついイヤミの一つを言いたくなってしまうほど、激務で忙しいのです。
男性医師だって一人の人間です。お釈迦様ではありません。
仕事ばかりしていれば疲れますし、イライラしてくることでしょう。
人間、余裕がなくなると優しさや思いやりというのが欠けてくる傾向にあるのは、ある程度仕方のないことだとは思います。
大学病院で妊活のために休みたいと言ったらどうなる!?
そもそも女医という職種についている女性の場合は、妊娠する前段階として、結婚するだけでも大変です。
さらに言えば、結婚の前段階のお付き合いや男性と出会うことすら大変なのですが、それについては、別の記事にて書いているので割愛しますが、結婚しても、女医は中々妊娠できません。
健康で夫婦の営みがあっても、女医さんたちはなかなか妊娠できないのです。
私は医師家系の女医なので、医者家族から女医の不妊、男性医師の不妊について、相談されることが多くありますが、切実に悩んでいる人は意外と多いです。
不妊治療を担当している産婦人科の女医自身が、実は不妊で悩んでいる!、なんてのは女医あるあるです。
その理由を大学病院のブラック勤務体系のせいだけにするつもりはありませんが、慢性的な寝不足や疲労、仕事量とストレスフルな環境が、妊娠しにくい要因の大きな理由になっているのは否めないでしょう。
ちなみにちょっと脱線しますが、不妊というと、女性不妊が表に出やすいですが、実は男性不妊も同程度あります。
男性自身は妊娠しないので気づきにくいものの、男性にもストレスや生活習慣により『後天性男性不妊』が発生することがあります。
不妊にまつわる問題はセンシティブなので、なかなか公には出にくい問題です。
しかし常勤女医や常勤男性医師の不妊問題を見ていると、医師として過酷なフル勤務をしていることも、不妊要因の間接的要因になっているのではないかと思わざるおえません。
そして、不妊の悩みを抱える医師の先輩や医師の親戚の話を聞けば聞くほど、医学科女子が「研修医や学生の内に妊娠して出産してしまおう!」という考えに至るのも、「無理はないかなぁ(むしろ賢い!)」、と思ってしまいます。
そこで、妊娠するために、ストレスを軽減して生活習慣を改善させるために、「妊活をしたい!」と、女医が大学病院で言ったらどうなるでしょうか?
「妊活のため少しに仕事をセーブさせてください。」
「不妊治療のために病院に通いたいので、お休みにさせてください。」
と、申し出るのは、妊活に寛容な職場であっても、勇気のいることでしょう。
大学病院では、出産を控えた妊婦の女医さんに対してですらマタハラがあるのですから、妊活に対する理解なんて、皆無に等しいです。
産休や育休にも理解がないのに妊活なんて、聞くまでもなく、どんな反応が返ってくるかは想像が付きますよね?
理解のない職場だと、「妊娠してもないのにそんなことを言うようなら辞めてくれ」と言われしまうのが関の山かもしれません。
男性医師が医局に申し出るものなら、「妊活だろうと子育てだろうと死ぬ気で働けない男の医者はいらない」なんて言われそうです。
もはやブラックどころか、抑留者強制労働ですよね。
波風たてないために女医が選んだ結論
ライフワークバランスを考える女医は、少しでもそうゆうことに寛容な職場を選ぼうとするものです。
女性の事情に理解のある職場に女医が流れるのは自然の流れですし、民間企業においてお同じでしょう。
仕事だけが人生ではありませんし、プライベートだげが人生ではありません。
バランスが大事だと言うことで、日本政府はやっと本腰を入れて働き方改革に着手していますが、女性は政府が動き出す前から自分自身でも模索をしています。
女性が働きやすい職場は、女性の事情に理解のある職場です。
共働きで子育てをしている上司が多かったり、妊婦やママさん女医が多い診療科だと、出産や妊活の相談がしやすいという女性医師は多いです。
出産や妊娠を、なにか悪いことをしたかのように感じて、肩身の狭い思いをせずにすむだけで、その職場の魅力は計り知れないものがあります。
そして、そういった風土が比較的あるのが、眼科や皮膚科です。
眼科や皮膚科が女医に選ばれやすいのは、ママになっても医師として長く勤務したいと考える女医にとって、働きやすい環境である可能性が高いからです。(残念ながら、医局によっては必ずしもそうとは限らないようです)
眼科や皮膚科が一番興味があったから、眼科や皮膚科を選んだという人ばかりではなく、妊娠出産を節目にメジャー外科系から転科する人がいます。
内科系から精神科への転科も聞きます。
仕事内容というより、仕事スタイルに融通が効きやすいからというのが主な理由のようです。
内科や外科に興味を持っていたのに、労働条件の悪さに嫌気がして違う科を選んだ人もいます。
その科の医局の教授がパワハラ・セクハラでひどい、という評判を嫌がり、第2希望の科に進んだ人もいます。
まとめ
女医がマイナー科を好み、「結婚」「妊娠」「出産」を機に離職する理由は、メジャー科の労働環境の悪さです。
逆に言えば、労働環境が良ければ、メジャー科にも、女医は増えるでしょう。
内科や外科でも、女性の「結婚」「妊娠」「出産」の人生のステージに対して理解があり、職場復帰しやすい環境があれば、ライフステージの変化をきっかけに辞める女性医師も大きく減るでしょう。
具体的には、非常勤や時短という働き方を導入し、勤務体系を自由に選べる環境が整うことが重要だと考えます。
しかし今の風潮は、次のような感じです。
「医者になったんだから女医でも男性医師に負けずに、根性と体力で外科や内科へ行け!」
「働きやすいマイナー科に行くなんて意思が弱い証拠だ!」
もちろん、本当に精神も体力もタフな人は、男性医師と同じように過酷な環境で戦えるかもしれません。
『24時間戦えますか!?』『月月火水木金金』というキャッチフレーズで企業戦士であることが美徳とされていた80~90年代の頃や、男尊女卑が台頭していた頃に、男女平等雇用均等法に向けて戦ってきた女性の大先輩たちには、本当に頭が下がるばかりです。
でも、だからと言って、
「昔はもっと大変だったんだから今は楽な方だ!もっと頑張れ!」
というのはちょっと違うと思います。
女医は別に、女医を「優遇」してくれる環境で働きたいということではなく、女性である事、ママであること、妊娠しているという理由で、必要以上に卑下したり、肩身の狭い思いをしたくないだけなのです。
「だけ」と思っていることは、今の日本の大学病院社会では、まだまだ贅沢な夢のような希望です。
でもいつの日か、お昼休憩を取るのと同じくらい、有給休暇や産休、育休(男性の育休を含む)を取ることが自然になる社会になって欲しい!
少なくとも、娘や孫は同じような嫌な思いをしなくてすむような社会に変えていきたい!
この思いは皆さん同じ気持ちではないでしょうか?